2025/06/26 00:00
いま、日本である一冊の本が話題を呼んでいます。
その本のタイトルは——『私が見た未来 完全版』(たつき諒 著)。
著者・たつき諒さんは、夢で未来を見てその内容を記録し続けた元・漫画家。この書籍では、1999年の初版時から「東日本大震災」を予見するような描写があり、2021年に「完全版」として復刊されてから、さらに多くの人の関心を集めてきました。
そして今、再び注目されているのが、「2025年7月5日に大災害が起きる」という予知夢の記述。
SNSやメディアでも拡散され、書籍は電子版を含め累計106万部を突破。東京都内では電車の中吊り広告も目立つようになっています。
影響は日本国内にとどまらず、中国語版も刊行された同書は、香港の風水師による“日本での大地震予言”とも重なり、観光にも影響を与えています。
実際、2025年5月の訪日客数は過去最多を更新した一方、香港からの旅行者だけが減少。
香港の航空会社の一部では、日本行きの夏季便を欠航・減便する動きも出ています。
けれど、こうした「予言」「予知夢」がどれほど注目されようとも、私たちが本当に向き合うべきは、
「災害はいつか必ず来る」という現実と、それに備える日々の心がけではないでしょうか。
不安ではなく、防災という前向きな行動へ——
今回はこの本をきっかけに、予言・予知夢よりも「備える力」の大切さを、改めて見つめ直してみたいと思います。
いつ来るかわからない災害に備えることは、心を守る行動でもあります。
ー 経緯 ー
今回の騒動のきっかけは、たつき諒さん(現在70歳)が1999年に出版した漫画単行本『私が見た未来』に収められた“予知夢”のエピソードにあります。
この漫画は、たつきさんが夢で見た未来の出来事を絵と文章で描いた作品。長らく絶版となっていましたが、2020年頃から再び注目を集めることに。
その理由は、表紙に小さく記されていた「大災害は2011年3月」の一文。
それが、実際に起きた東日本大震災を“的中”させていたのではないか——と、SNSやテレビ番組で取り上げられ、一躍話題となったのです。
中古市場ではプレミアがつき、一時は10万円を超える価格で取引されるほど。作品の発行後に漫画家を引退していたたつきさんは、この再燃する関心と憶測を受けて、ご自身の解説を加えた『完全版』を、2021年に飛鳥新社から出版されました。
⚫︎「新たな予言」が不安を呼ぶ背景
そして現在、この話題をさらに拡大させているのが、新たな予知夢の存在です。
『完全版』の解説部分でたつきさんは、
「2025年7月、日本に壊滅的な津波が襲来する夢を見た」と語っています。
その夢の内容は、「東日本大震災の3倍の高さの津波が、太平洋沿岸の複数の国に押し寄せる」というもの。
イラストや地図を添えて詳細に記されており、読者に衝撃を与えました。
さらに、たつきさんがその夢を見たのが2021年7月5日だったことから、あとがきでは次のように記されています。
「夢を見た日が実現化するならば、次にくる大災難の日は『2025年7月5日』」
こうして、「7月5日」という具体的な日付が一人歩きするようになり、SNSやメディアでも注目されるようになったというのが、今回の騒動の経緯です。
⚫︎これは、偶然の一致が一人歩きしてしまった結果ではないでしょうか。
たつき諒さんの「予知夢」は、もともとは一部のマニアの間で語られていた都市伝説のような存在だったと、私は感じています。
そもそも、地震大国・日本に暮らす私たちは、常に地震の恐怖と隣り合わせの生活をしています。
「いつ大地震が起きてもおかしくない」——
そんな言葉は、昔から何度も繰り返されてきました。
政府の地震調査委員会によれば、南海トラフ巨大地震は、今後40年以内に90%の確率で起きるとされています。
しかし、こうした地震が「いつ」起きるのかを正確に予測することは、現代の科学でもまだ難しいのが現実です。
だからこそ私たちは、
「もしかしたら来るかも」ではなく、「必ず来る」ものとして日頃から備えておく意識が大切なのではないでしょうか。
⚫︎大切なのは、恐れることではなく、備えること。
不安の中でも、自分や大切な人を守るための“知識と行動”こそが、防災への一歩になります。
キーテールアートや猫モチーフのポーチ・バッグを多数取り扱っておりますが、これらは見た目の可愛らしさだけでなく、実用性も兼ね備えています。
たとえば、小さなポーチには非常用の連絡先メモ、ミニライト、常備薬、絆創膏などを入れておくことで、いざというときの「小さな備え」になります。お気に入りの雑貨に、防災のエッセンスを少しだけ。それだけでも、日々を前向きに過ごすための心の準備につながるのではないでしょうか。
⚫︎未来を正確に言い当てられる人は、実のところごくわずかでしょう。私たちの生きるこの世界は、「経験から学ぶ世界」。
だからこそ、本当に賢い人ほど、軽々しく「予言」のような言葉を口にしないのだと思います。
SNSが発達した現代では、「7月5日」の予言を掲げて危機感を煽り、
高額な参加費を求めるセミナーやイベントも一部で見受けられます。
人は、本能的にネガティブな話題や、個人的な不安に関する情報に強く惹かれてしまうもの。
ですが、そんな憶測に心が揺さぶられそうになったときこそ、一度立ち止まり、歴史を振り返ってみませんか?
歴史に残る大震災や火山の噴火の多くは、記録を辿れば一定の周期で起こっていることが分かっています。
つまり、私たちには「数字」や「実績」に基づいて、冷静に備える手段があるということです。
予測や噂に振り回される前に、信頼できるデータと過去の事例に目を向けること——
それが、防災の第一歩ではないでしょうか。
こうした「7月5日」という日付を巡る話題は、さらに広がりを見せています。
2025年6月27日には、たつき諒さんの著書にインスピレーションを得た映画『2025年7月5日 午前4時18分』が全国公開予定となっています。
この件に関しては、出版元である飛鳥新社も公式に声明を発表しています。
現時点において、当該映画の内容については一切関知しておりません ——(飛鳥新社公式サイトより)
⚫︎たつき諒さんは2024年、自費出版という形で新たな書籍『天使の遺言』を刊行されました。
その中でたつきさんご自身は、『私が見た未来』完全版の出版に至るまでの舞台裏について、こう語っています。
「復刊の予告を知って出版社に連絡したのは、知らないうちになりすましが富士山噴火の虚言を広めていたからでした。出版社は慌てて作り直しを始め、私は名乗り出て『完全版』の制作に関わりましたが、結果的には“出版社の意向中心で出版され、不本意な思いもありました」
——『天使の遺言』「はじめに」より抜粋(文芸社)
さらに、たつきさんは続けます。「商業出版では、売れるものを、という空気が強く、自分の伝えたいことより、編集部の判断が優先されがちでした。だからこそ、今回は家族のことや、自分の原点を正直に綴りたくて、自費出版という道を選びました」
こうした言葉からも、表には見えない出版業界の力学や、メディアと話題性に振り回される構造が垣間見えます。
たつきさんの誠実な語りには、「大切なものを正しく伝えたい」という静かな意志が込められているように感じられます。
振り返れば、20世紀末には「ノストラダムスの大予言」による人類滅亡説が広まり、
世界中が漠然とした終末への不安に包まれた時期がありました。
けれども、その後もさまざまな“終わりの予言”は繰り返され、
私たちはその多くが現実にならなかったことも知っているはずです。
そして今、またひとつ「2025年7月5日」という日付が、世の中をざわつかせています。
いよいよ、その日まであとわずか——
果たして、「予言」の結末は、どんな形で私たちの記憶に刻まれるのでしょうか。