2024/01/11 00:00

猫好きでなくとも憎めないのが子猫のつぶらな瞳。
よく見ると眼の中の瞳は黒くタテ長でそれが尚更愛くるしくも魔性的です。

そんな猫の眼の情景を宝石の中に再現したのが、クリソベリルキャッツアイという宝石です。
ふっくらとした蜂蜜色した金緑石の中央を、くっきりと走る乳白色の光の帯は黒猫の眼差しのようです。

クリソベルキャッツアイの石言葉は
「守護」「慈愛」など。 古来より魔除けの効果があると信じられ、幸運を呼ぶ石としてお守りとしても大切にされてきました。


クリソベリルをカボション研磨したら、表面から「猫眼効果」(シャトヤンシー)が浮き出た、という光学現象が発見されたのは古い昔でなく近年のことです。
しかし、誰が、いつ、どこで“猫の眼”に出逢ったかは、不明です。

ブラジルで発見された石が最初のクリソベリルキャッツアイと云えそうですが残念ながらそれも確たる資料は見当たりません。
最初の商業産出地がスリランカ・ラトナプラ地方であったのは、間違いないようです。しかしそこは1980年代でほぼ枯渇してしまい以後ブラジル・ミナスジェライス州アメリカーナ渓谷地域に移り、更に今世紀に入ってマダガスカル・イラカカ地方が最大の供給地になっています。

大戦後の国際宝石市場で、ダイヤモンド以外に特に日本人の消費量が多かった宝石としてオパール、ヒスイ、そしてこのクリソベリルキャッツアイが挙げられます。
国際相場を引き上げたというほど、日本人の購買力は旺盛だったと云われますが、クリソベリルキャッツアイに至っては時の世界相場を作るほどの買いっぷりだったようです。
1960年東京オリンピック後の好況に沸く日本の首相池田勇人が、スリランカ訪問の際、家族への土産にとクリソベリルキャッツアイを購入したそうですが、その購入価格約1000万円が当時の新聞ネタになりました。


光と宝石が演出する「猫眼効果」という光学現象は、クリソベリルにおいてこそ最も効果的に且つ最も美しい映像を私達にもたらしますが、内包物等の条件さえ揃えば、他の宝石にも十分現れます。

その代表例は、アパタイト、ダイオプサイドエンスタタイト、コーネルピン、シリマナイトクォーツ、ネフライト、トルマリン、ベリル、オパール等々で、各石名の後に「~キャッツアイ」又は「~キャッツアイタイプ」と表記されています

クリソベリルと同じ組成の鉱物アレキサンドライトにもキャッツアイタイプが存在し昼・夜で変色する特性だけで高価なこの石に更に猫の眼効果が入っ たアレキサンドライト・キャッツアイは、同サイズのダイヤモンドをも遥かに凌ぎ、相場が成立し得ないほどの高嶺の花となっています。


ークリソベルキャッツアイのあれこれー
宝石の中の「キャッツアイ」は、猫の目玉ではなく、細長い瞳孔の様を指しますが、その瞳孔は明るい時にこそ細長くても、暗い夜道などでは実に眼球全体に開き、暗闇に光る二つの白球を私達はよく目にする訳です。

面白いことに毛色が白い白猫の瞳は”金目銀目”といって左右瞳の色が違うそうです(黄みと青み)。これほど身近な動物なのに十二支に 猫年がないのは何故でしょう??
「十二支」の産みの親 古代中国には、そもそも猫がいなかったとか?!。その代りなのでしょうか、同じネコ科のトラ年を抜擢しました。宝石界にも虎目石ならぬタイガーズアイが あり有名なタイガーモチーフのジュエリーが一世を風靡したこともありました。

上空の天体には「キャッツアイ星雲」という星群があります。 りゅう座に位置するこの惑星状星雲は、宇宙望遠鏡のX線データ画像でしか確認できませんが、その画像からは猫の眼をイメージできる青黒い”瞳”が観察さ れ、まるで宇宙を見渡しているかのようです。月に行ったときのウサギ君も、この星に目くばせしたのかもしれませんね